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2015年12月13日日曜日

R18BL短編『うそつき』あとがき


『うそつき』完結いたしました。
お付き合いありがとうございました。

あとがき、というほど、大した事も書けないのですが…(゚ー゚;
裏話を少し…。

この話を思いついたきっかけが、
今年の1月に、ある人にとてもショックな嘘をつかれたのが始まりでした(笑)
で、うそつきな男にふりまわされる話を書きたいなぁと思っていた時に、
ユニ○ロに買い物に行きまして…
なんだかとても可愛い男の子の店員さんがいて、、(゚ー゚;
洋服を見るふりをしながら、観察…いやいや、、!(´Д`;)
たぶん、バイトくんかなーと思うのですけど、
これがまたよく働く真面目な感じで。

そしたら、やたらと男前な年上の店員さんが、何かとその彼にちょっかいかけて(ちょっかいかどうかは、腐目線でしか見れないから、よく分からないですけどwたぶん作業の指示をしてたんだと思いますw)

もう、どう見てもCPにしか見えなくなってしまって!!

で、家に帰って、すごい勢いで書きはじめたのが、このお話でした。
そんなこんなで、私にしては短期間で書いて、あまり見直しもせずに、 ひっそりとサイトに上げていたのですが、
ツイッターでフォロワーさんから続編のリクなどいただいていて、
二人がこの後温泉に行くというお話を途中まで書いているのですが、筆が止まってしまったままでして(*v.v)。

もう今年も終わりに近づいてきたので、放置したままではいかん!と思い、
読み直したら、修正箇所が出るわ出るわで、、
続編を書く前に、どうしても書き直したくてブログで更新させていただきました≦(._.)≧ ペコ

余談ですが、、
作中に、「高岡」という西脇の同僚が出てきますが、
彼は、私が初めて書いた小説『出逢えた幸せ』の主人公、高岡直です。

直は出逢えた幸せの番外編『幸せのいろどり』のラストで、
ちょうどアパレルメーカーに就職していたので、引っ張り出してしまいました。


ということで、この後 温泉編の続きを書きたいと思っています。

いいかげんだけど、どこか憎めない男、西脇は、本当に千聖とうまくいくのでしょうか。
と、不安を残しつつ、
なんとかバレンタインまでには形にしたいなーと思っています。

その時は、またお付き合いいただけると嬉しいです!!

ありがとうございました。





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感想やご意見などいただけると嬉しいです。
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R18BL短編『うそつき』(28)【完結】

はじめて読む方は、こちらから。




(28)


 ―― そんな顔したって、もう騙されないぞ。

 俺は西脇さんに背を向けて、鍵穴に鍵を差し込んだ。

「帰ってください。」とだけ、振り絞るように声に出して、差し込んだ鍵を回すと、ガチャンと、鍵の開く音が、アパートの静かな廊下に響いた。


「…… ごめんな。」


 短い言葉と共に、頭の上に感じた掌の温度は、でもすぐに離れていく。


 ―― 何、謝ってんだよ。


 今、傍にあった気配が、足音と共にゆっくりと離れていくのが分かった。


 ―― なんだよ、また何も言わない気かよ。


 ドキドキと、心臓が煩い。分かってる…本当は俺、全部気が付いているんだ。いつも強引で、自分勝手で、嘘つきで。


 だけど……、


「―― 待てよ!」


 考えるよりも先に俺は振り向いて、階段を下りて行く嘘つきの背中を追いかけた。

 貴方は狡いよ。また何も言い訳もせずに行ってしまおうだなんて、許さないんだからな。

 それでカッコ付けてるつもりかよ、分かってんだから。

 高岡さんが言いにくそうにしていたのは、きっと二人が離婚したから。

 あの時の奥さんのお腹だって、妊娠しているように見せかけていただけで、それを見ても何も言わなかったのは、貴方も、奥さんの悲しい嘘を見抜いていたから。


 俺に言ったあの最後の言葉だって――


「―― うっわ!」


 階段を下りて行く嘘つきの背中に飛び付いて、バランスを崩して、数段二人で転げ落ちても。


「―― 痛ってー! 酷いなぁ、千聖は。」


 腕の中で、俺のことを庇いながら倒れたことも、ちゃんと分かってるんだからな。

 倒れた西脇さんの身体の上で、俺はその顔を両手で挟んで、唇を押し当てた。

 もうその唇が、優しい嘘を吐かないように……。

 驚いている顔がおもしろくて、俺は唇が僅かに触れるくらいの距離で、笑い声を漏らした。


 ――ああ、なんだか俺も言ってみたくなってきたな、あの言葉。


「――愛してる。」


 これは嘘なんかじゃないよ。俺の本心。

 さっきよりも、目を丸くして驚いている彼にもう一度口付けをして、あの言葉を繰り返した。


「愛してる…… 志芳。」



                                 
 ― うそつき ―(改稿版) end 

 2015/12/12





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2015年12月12日土曜日

R18BL短編『うそつき』(27)

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(27)



 バイトを終えて、帰宅する途中、ケーキ屋の前でバレンタインデーと書かれたポスターが目に入って、「…… ああ、俺、今日誕生日じゃん。」と思い出した。

 別に誕生日だからって、今年も何も変わらない。

 ケーキでも買って帰ろうかなと、ちょっとだけ思って店に入りかけたけど、やっぱりやめた。


 ―― 独りでケーキ食べたって、虚しいだけじゃないか。


 自嘲しながら、店の前を通り過ぎた。

 今夜は、底冷えがして、空からはチラチラと、雪が舞い降りていた。マフラーを口元まで引き上げて、アパートまでの道を急ぐ。早く、帰って熱い風呂に浸かりたい。

 薄灯りに照らされた階段を駆け上がり、踊り場の辺りで鞄の中に手を突っ込んで、部屋の鍵を探した。


「あれ…?どこに入れたっけ。」


 なかなか見つからない鍵を手探りで探しながら、階段を上がりきると、自分の部屋の前に誰かが座り込んでいる影が見えた。


「…… え?」


 最初は、酔っ払いか何か?と思ったんだけど、その人影は俺に気付いて立ち上がる。

 はっきり見えなかった顔が、ポーチライトに照らされる。

 その人は、手に旅行にでも行くような鞄を持っていて、にっこりと俺に微笑みかけて言った。


「誕生日おめでとう千聖。」


「な? なんで?」


 驚き過ぎて、声が裏返ってしまっている俺に、西脇さんは不思議そうな顔をする。


「なんでって、何そんな驚いてんの。誕生日に温泉に行くって約束しただろ?」


 迎えに来たよ。と、笑いながら、呆然としている俺の身体を抱き寄せる。

 ふわりと西脇さんの煙草の匂いが鼻腔を擽って、懐かしい想いが溢れ出してきそうになった。


 だけど、――『俺も、本気じゃないよ。』


 それと同時に、あの最後の言葉が頭に浮かんできて、力一杯腕を突っ張って、西脇さんから身体を離した。


「ちょっ、ちょっと、放してくださいっ!」


「何だよ? つれないなぁ、久し振りの抱擁なのに。」


「何言ってるんですか!もう俺と貴方はそんな関係じゃないでしょう?」


 俺の言葉に、西脇さんは何も返してこなくて、困ったように眉を下げた。






続きます。。




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2015年12月11日金曜日

R18BL短編『うそつき』(26)

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(26)



「あ、そう言えば、去年の催事の時にこの店に応援に来てた、西脇ってやつ、憶えてる?」


 忘れようと努力していた名前が、突然出て、心臓がドキリと跳ねた。


「…… はい。一緒に休憩に行きました。」


 俺がそう答えると、高岡さんは大きな目を更に大きくして、「そうそう!」と言って、話を続ける。


「あいつさ、去年の移動で、北陸に行ってたんだけど、戻ってくることになってさ。」


 ―― 北陸?


「へ、へえ。そうなんですか。」

 
 その時、お腹の大きかった奥さんの姿が頭を過ぎった。北陸へは、一緒に行ってたんだろうな。


「奥さん、赤ちゃん生まれたんですよね。」


 会話を繋げる為もあって、何気なくそう訊いただけなのに、高岡さんは、驚いたように目を丸くする。


「赤ちゃん?いいや? あいつ…… 子供はいないよ。なんで赤ちゃんが生まれたと思ったの?」


 ―― え?


「…… え…… なんか…… そんな事を訊いたような気がして……。」


 違う人と勘違いしてたかなーって、慌てて誤魔化した。


「そうだよね! 勘違いだろうね。」


 そう言った、高岡さんの表情に少し違和感を感じて、俺はつい訊いてしまっていた。


「北陸へは、単身赴任じゃないですよね? 奥さんも一緒に行ったんですか?」


「え…… いや……、」と、高岡さんは、困った顔をして言い淀む。


 どうしたんだろうと、思いながらも、もうそれ以上その話を続けたくなくて、俺は話題を変えた。

 赤ちゃんが生まれたという話は無いというのは、本当みたいで、妊娠の話も訊いてないみたいだった。

 あんなに目立つお腹をしていたし、高岡さんとは仲が良さそうだったのに。もしかして、また流産とかじゃないよねって、少し気にはなったけど。

 俺にはもう関係のないことだし、そのことについて、俺が気にするのもいけないことのような気がしていた。


       *




続きます。。



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2015年12月10日木曜日

R18BL短編『うそつき』(25)


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(25)


 *


 『今度来る時は、泊まるよ。』


 そんなことも言ったことがあったけど、ただの一度だって、俺の部屋に泊まったこともない。

 いつだって、自分の都合の良い時だけやってきて、食事の支度をして待っていた夜だって、

『晩飯、今日はいいや、腹減ってないし。』と、言って食べずに、でも、セックスはするんだ。そして、必ず奥さんの待つ家に帰って行った。


『じゃあ、土、日で、泊まりがけで何処か行こうか。』


『そうだな、温泉とか行かない?部屋に露天風呂があるところとか!』


 無理な約束ばかりいっぱいして、結局、貴方は一度も約束を守ってくれることはなかったね。


『愛してるよ、千聖。』


『お前といると、嫌なことなんて全部忘れる。』


『千聖は俺の癒やしだな。』


『お前は、俺のやり甲斐だ。』


 貴方の口から出る言葉は、全部うそだった。分かっていたのに、なんでこんなに胸が苦しいんだろう。

 貴方のことなんて、好きじゃなかったのに。恋人でも、愛人でもない、ただの…暇潰しだって、分かっていたのに。

 なんで、こんなに…… 涙が止まらないんだ。


      *


 俺はバイトだから、もうあの人に会うこともない。

 一緒に過ごした夜は、数えることが出来るくらい少ないのに、なかなか忘れることができなくて。

 あれから一年が過ぎたのに、まだ心の奥に西脇さんの存在が確かにあって、それでも忘れたふりをして、一生懸命に前を向いていた。

 そんなある日、西脇さんと同じ会社で、うちの店の営業担当だった高岡さんが、久しぶりに巡回に来た。

 去年の秋に自社ブランドのショップの担当になってから、俺のバイト先の店は他の人が担当するようになっていた。


「久しぶりだね、千聖くん。」


「本当ですね、高岡さん担当が変わったから、今年の周年祭の時もいなかったですしね。」


 自分でそう言って、去年のあの催事初日の光景が頭を過ぎってしまう。







続きます。。



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2015年12月9日水曜日

fc2ブログの凍結のこと。

私にしては珍しく(?)
ずっと休まずに続けてこれた『うそつき』
昨夜、とうとう更新出来ずじまいでした(*v.v)。

今、このブログの投稿画面を開いたら、何も書いていないページが白紙のまま下書き保存になってましたよ(笑)

というのも、昨日突然起きた、fc2の大量凍結騒ぎで、更新しようとしていたのに放置してしまったのでした(*v.v)。

うちは、7月からbloggerで更新するようになったので、
それほどの被害ではなかったのですが、

それでも旧ブログのfc2のアカウントは残していて、
そこにしか載せていない短いSSなどもあったし、
カテキョーツバメの漫画は、あちらで更新しようと思っていましたから、
かなり慌てました。

ここのブログからもリンクを貼っていたので、とりあえずリンクを消したり、
どこが 違反していたのか、かなり悩んだですよ!

fc2の方は、アダルトカテに登録していたので、なんで凍結になったのか?

ほとんど諦めていたのですが、今日19時頃だったかな。
友人のブログが復活していたので、
ダメ元で問い合わせしてみようと思い、
問い合わせ画面に行ってみたら・・・
こんなお知らせがこっそり書いてあったのです。↓
 ↓


なんじゃこれ?!
キャッシュの関係なのか、なんなのか、うちはその時点でまだ凍結解除にはなってませんでしたが。

それから30分後くらいに解除になって、普通に閲覧できるようになりました。
チャンチャン。。ヽ(`Д´)ノ

後でリンク貼り直さなきゃ・・・

先に『うそつき』の更新準備しにイってきます!


≦(._.)≧ ペコ




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2015年12月8日火曜日

R18BL短編『うそつき』(24)


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(24)


 「……本気じゃないです、西脇さんのこと。」


 それだけ言って、俺は俯いた。もう前を見ることができなくて。


「そう。」


 彼女の声は聞こえても、彼女が今、どんな表情をしているのか、分からない。


「じゃあ、今からここに、志芳を呼ぶね。」


 ―― なんで今更……。そう思うけど、俺には何も言う権利はない。


『男相手なら、妊娠の心配ないから、楽なんだって。』


 西脇さんにとって、俺はその程度の存在なんだから。

「もしもし…」と、彼女が通話をしている声だけが、耳に届いていた。



       *


 暫くして、誰かが息を切らして、俺達が座っているテーブルに来た。

 俺は、あれからずっと俯きっぱなしで、顔を上げることが出来ないけど、それが西脇さんだということくらいは分かる。


「どういう事だ。なんでここに千聖がいる?」


 慌ただしく椅子を引く音を立たせて、奥さんの隣に座った西脇さんが、そう言った。


「千聖くんに会いに行くって、私、今朝言ったはずよ。」


「会いに…って、顔だけ見にいくって事だったろう?」


 二人が言い合うのを、俺は俯いたまま訊いていた。―― 今更、どうでも良い話を。


「千聖くんにどうしても訊きたい事があったから会いにきたんだけど、正直に言ってくれたから、次はあなたにも確認しようと思って。」


 西脇さんの溜息が、微かに聞こえた。


「千聖くんは、志芳のこと、本気じゃなかったんだって。遊びだったんだって。」


 その言葉に、俺は俯いたまま膝の上で拳を握る。

 一拍おいて、「…… そうか。」と西脇さんが言った。


 ―― もう終わった…… そう思った。これで終わりだ、もう何も話は無いはずだ。


 なのに、彼女はもっと俺を、奈落の底に突き落とす。


「ねえ、志芳はどうなの?千聖くんのこと、本気なの?」


 ―― そんなこと、訊きたくないのに。


 答えは分かってる。だから、もう訊きたくないと、その場で耳を塞ぎたい衝動に駆られていた。


「…… ああ、俺も…… 本気じゃないよ。」



       *





続きます。。



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2015年12月7日月曜日

R18BL短編『うそつき』(23)


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(23)


 俺が口籠っていると、彼女は、「私達ね…、」と話し始めた。


「結婚して5年目なんだけど、やっとこうして新しい命を授かったの。」


 細くて、柔らかそうで、綺麗な手が、愛おしそうにお腹を撫でている。その左手の薬指に指輪が光っているのが見えた。


 ―― 西脇さんのと同じ…… 結婚指輪。


「本当はね、結婚する前に妊娠したことが分かって、それで…… 所謂、できちゃった婚だったんだけど。」


 その言葉に、俺はまた驚いて顔を上げた。


「それで結婚したのに、流産しちゃって…。やっとこうして待ちに待った赤ちゃんが、今お腹にいるのよ。」


 ―― そうだったんだ。そんな話、訊いていなかった。


 元々、奥さんのことや家の事を、なんでも俺に話すようなことはなかった。勝手に部屋に来て、一緒に食事をする時もあったけど、食べない時もあった。

 だけど、毎回、逢うたびに必ず…セックスはする。

 そうだった。ただそれだけの関係だってこと、分かっていたはずなのに。なのになんで、こんなに胸がズキズキしているのか。


「志芳が、バイだってことは、結婚前から知ってたの。だから男同士でそういうことをするのを、別に非難したりはしないし、ただの浮気なら、私、許せるの。」


 彼女は、「でも…、」と言って、そこで言葉を区切り、俺に目を合わせてきた。


「志芳は、ゴム使わないでしょう?嫌いだって理由で。勝手でしょ?だからできちゃった婚だったんだけど。」


 クスッと小さな笑い声を唇からこぼして、勝気そうな瞳が俺を見上げた。


「男相手なら、妊娠の心配ないから、楽なんだって。」


 ズキン…と、今までよりも大きく胸の奥が震えた気がした。痛くて、痛くて、どうしようもない。


「もしも貴方が本気だったら、申し訳ないと思って……。」


 と続けた彼女の声が、遠くなっていく錯覚がする。

 早く、こんなこと終わらせたい。そうしないと、俺の中の何かが壊れてしまいそうな気がしていた。


「…… じゃないです。」


 やっと出した声は、小さく掠れてしまう。

 彼女は、可愛く微笑んで、首を傾げて「……え?」と訊き返してきた。






続きます。。



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2015年12月6日日曜日

R18BL短編『うそつき』(22)


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(22)


  丸く大きなお腹以外は、細くて…小さくて可愛い人だ。だけど、俺を見つめる瞳は、意思の強い光を放っていた。


「…… あなたが、千聖くん?」


問われて、俺は小さく頷いた。


「ごめんなさいね、仕事中に電話したりして。どうぞ、座って。」


「いえ……、失礼します。」と、俺も軽く頭を下げて席に着いた。


 だけど、目の前に座っている人の顔を直視できなくて、俯き加減な俺のことを、その人はじっと見つめてくる。


「単刀直入に訊くね?…志芳と寝たの?」


「…… !」


 問われた言葉に、俺は思わず顔を上げた。あまりにも単刀直入過ぎて、俺は訊かれたことにどう答えたらいいのか分からなくて。


「…… いいえ……。」


 小さい声で、そう否定するしかなかった。


「いいのに、正直に言ってくれても。ホテルを使った時に、志芳はクレジットで支払いしてたのね。それで分かってしまったの。最初は否定してたけど、すぐに観念して本当のこと喋ったのよ。」


 彼女は、そう言って、オレンジジュースの入ったグラスを手にして、もう片方の手でお腹の上の方を摩っていた。

 その姿を直視できなくて、俺はまた視線を逸らしてしまう。

 ホテルのことがバレて、それで本当のことを言ったにしても、俺の名前もバイト先まで喋っちゃったのか?あの人は。


「腑に落ちないって顔してるね?志芳はね、私が問い詰めたら何でも喋ってくれるのよ。」


 結婚した時から、私には隠し事をしないことになってるからね。と、続けた。

 それは、二人の仲が揺るぎないということを、俺に分からせるために、そう言っているように聞こえた。


「じゃあ、質問を変えるね。千聖くんは、志芳のこと本気なの?」


「…… 俺…… は……、」


 ―― なんで躊躇してるんだ俺。はっきり本当のことを言えばいいのに、本気じゃないって。
 なのに、その言葉がなかなか出てこない。

 何度も言おうとするんだけど……、そうすれば、とりあえずこの場は簡単に終わるのに。

 なのに俺はその言葉をなかなか言えずにいた。








続きます。。



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2015年12月5日土曜日

R18BL短編『うそつき』(21)


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(21)



 バイトが終わって、俺は急いで外に出て、指定されたカフェに向かう。

 早く行かないとと、時間を気にしているけれど、そこに向かう足は重い。


 ―― 行きたくない。


 頭の中で、自分の声が響いていた。

 恐る恐る電話に出た俺に、受話器から聞こえてきた声は、やけに落ち着いた女の人の声だった。


『…… 西脇の家内です。と言えば、どういう用件かお分かりですよね。』


 ―― なんで、なんで、西脇さんの奥さんから直接電話が掛かってくるんだ?


 歩きながら頭の中でぐるぐると考えるけど、答えは見つからなかった。


 ―― まさか、西脇さんが浮気をしていると気付いて、探偵雇ったとか? 西脇さんは、この事を知っているんだろうか。


 バイト中だったから、連絡をする事も出来ず、終わってからも、急いで店を出てきたから、そんな余裕は無かった。


 ―― いや……、電話をしてみよう。


 そう思って、俺は歩きながら携帯を取り出した。呼び出し音は、5回鳴って留守電に切り替わる。


 ―― そうか、まだ仕事中のはずだ…… どうしよう……。


 徐々に不安が押し寄せてきて、胸が早鐘を打ち出した。

 だけど、そうしているうちに、目線の先に、指定された店のサインボードが見えてきてしまう。

 足が勝手に立ち止まりそうになるけれど、ここで帰ってしまっても、この不安が消えるわけじゃない。

 俺は意を決して、店内に足を踏み入れた。


 店の中は、この時間のわりには、空いていて、電話で教えてもらった服の色はすぐに見つけることができた。

 深い青のニットのワンピースは、少しゆったりしているけれど、妊婦の体型を隠せるほどではない。

 奥さんが妊娠しているなんて、西脇さんからは何も訊いていなかったから、驚いて立ち止まってしまった。

 俺の視線に気付いて、その人はゆっくりと立ち上がり、軽く会釈をする。





続きます。。



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2015年12月4日金曜日

R18BL短編『うそつき』(20)


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(20)



 だけど……、用意した食事は、独りでなんて食べる気がしなくて、結局無駄になるんだけど。

 だから、誕生日のバレンタインデーに温泉に一泊旅行なんて。

 しかも土日なんだから、期待なんて初めからしていなかった。

 こんな関係も、長く続くわけがない。また新しい誰かを見つけたら、そっちにいくに決まっている。恋人だなんて思っていないし、ましてや愛人てわけでもないんだ。

 西脇さんにとって俺なんて、ただの…… 暇潰しの相手でしかないんだ。

 そして、俺も、西脇さんのこと……。

 恋人じゃないから、別に苦しさとか、切なさなんて感じたりしない。

 だからこういう関係になっても、奥さんに悪いとか、後ろめたいとか、そういう感情は俺にはあまり無かったのかもしれない。



       *



 そう……、こんな関係、長続きするわけがない。

 近い未来には、終わるんだと理解していたし、それが悲しいなんて思っていなかった。

 でも、その日は、あまりにも突然訪れた。


「千聖くん、電話入ってるよ。」


 接客を終えて、お客様を見送った直後に、店長から声を掛けられた。


「電話?俺にですか?」


 店に私用の電話が掛かってくるなんてことは、ありえなかった。誰にもここでバイトをしていることを教えていなかったから。


「誰からですか?」


「西脇さんて人。」


 ―― え?


 西脇さんが店に電話してくるなんて、何かの間違いじゃないかと思った。

 取引先とアルバイトが、個人的に付き合っているなんてこと、知られないようにって、西脇さんはすごく気を遣っていたから。

 何かあったのかもしれないと、嫌な予感が頭を過る。だけど店長はニヤニヤしながら、俺の腕を軽く肘でつつく。


「女の人だよ。彼女?」


 その言葉に、頭が真っ白になった。

 女の人で西脇って、一人しか思い浮かばない。





続きます。。



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       *

2015年12月3日木曜日

R18BL短編『うそつき』(19)


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(19)


 別に、そんなこと期待していた訳じゃない。

 毎年、自分の誕生日なんて、自分でも忘れてる。憶えてくれているのは、親くらいなもんだ。


「いいじゃん、じゃあ、土、日で、泊まりがけで何処か行こうか。」


「―― は?」


 何いってんだ、この人。バレンタインデーに泊まりで何処か行くなんて、出来るわけないじゃないか。



「そうだな、温泉とか行かない?部屋に露天風呂があるところとか!」


「―― はぁ、そうですね。」


 適当に相槌を打つ俺の額に、西脇さんはまたキスをひとつ落とした。



       *



 別に期待なんてしていなかった。
 
 いつも逢う時は、俺の都合なんてお構いなしで、平日の夜にだけやってきて、泊まることも一度もなかった。

 必ず奥さんの待つ家に帰っていく。

 一度、嫌味のつもりで訊いたことがある。

『どんなに遅くなっても家に帰るなんて、西脇さんは奥さんのこと、よっぽど大切にしているんですね。』


『違うって、ただ、アイツ怒ると怖いからな。』


 ―― うそつき。


 そんな訳ないだろ? そりゃ、俺の前で、一番大切なのは奥さんだなんて、言えないだろうけど。

 だから、温泉なんて行けるわけがないんだ…と、俺は自分に言い聞かせた。

 だって、期待すればするほど、ダメだった時のがっかり感は半端ない。

 今までだって、たまに「今夜行く。」なんて勝手にメールしてくるから、俺は、バイトが終わったら速攻で上がって、帰りにスーパーに寄る。

 西脇さんが来るまでにと、急いで食事の支度をして待っていても、連絡もなしに、すっぽかされる事なんて、しょっちゅうだった。

 最初は、ここに来るまでに、車で事故ったんじゃないかとか、連絡取れるまで心配で眠ることもできなかった事もあったけど。

 今は、「またか……」と思うようにして、さっさと寝てしまう。





続きます。。



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2015年12月2日水曜日

R18BL短編『うそつき』(18)


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(18)


 フーッと吐き出した紫煙が、テレビ画面から放たれる光の中を漂っていた。


「部屋の中で吸わないでください。匂いが移ってしまう。」


「ごめん。」


 素直に謝って、すぐに灰皿に煙草を押し付けると、立ち上がってベッドへ近付いてくる。


「でも、そう言いながらもちゃんと灰皿を用意しておいてくれるんだから、千聖は優しいよな。」


 そう言って、屈むと俺の額に、リップ音を立ててキスを落とした。

 西脇さんは、俺がうとうとしていた間に、もう服をちゃんと着込んでいる。

 さっき座っていた、クッションソファーの横には、ハンガーに掛けてあったはずのコートが置かれていた。


「…… 帰るんですか。」


 質問に「うん。」と頷いて、「また来週くるよ。」と、当たり前のように言う。

 たまには泊まってくれれば良いのに…、なんて、決して口には出したくない言葉が胸を過る。


「そんな拗ねたような顔するなよ。帰り難くなるだろう?」


 そう言って、ベッドの縁に座って、肌に掛けていた毛布ごと俺の身体を抱き寄せた。


「な、何がですか?なんで俺が拗ねるんですか。」


 心の内で考えたことを、顔に出したりなんて、絶対してない自信はあるのに、決まってそう言われる。

 きっと、こういうシチュにも慣れているからなんだと、思った。


「そうだ、千聖って誕生日いつ?」


 不意に訊かれた質問に、俺は一瞬答えることを躊躇した。

 だって、絶対笑われる。


「…… 二月十四日ですけど……。」


「マジで?」


 ほらね。西脇さんは、目を丸くして、口元に手を当てて、笑うのを我慢しているように見えた。


「笑いたければ、笑ってくれて良いですよ。」


 バレンタインデーが誕生日なんて、ネタにされるだけだって、今までの経験から諦めてる。

 だけど西脇さんは、驚いた表情はしたけれど、笑ったりしなかった。


「なんで笑うの。凄いじゃん、絶対忘れたりしないよ。」


 そう言いながら、西脇さんはローチェストに置いてあるカレンダーに手を伸ばした。


「二月十四日って、土曜日か……。」


―― ああ、土曜日になんて、逢えるわけないよね。






続きます。。



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2015年12月1日火曜日

R18BL短編『うそつき』(17)


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(17)


「俺も……、西脇さんが…… すき。」


 すき……なら、言える。

 すきって言葉には、色んな意味があるから。


「ねえ、好きじゃなくて愛してるって言って欲しいんだけど。」


 愛してるなんて、俺は、西脇さんみたいに嘘を上手く吐けないから。


「せめてさ、名字じゃなくて、名前で呼んでくれない?志芳って。」


「…… 嫌です。」


 名前でなんて呼ぶもんか。何故か頑なにそう決めていた。

 プイっと横を向くと、クスッと笑い声が聞こえて、頬に唇を押し当ててくる。


「本当可愛い。千聖って俺の癒やしだな。」


「やめてください、可愛いなんて…。」


 そんな事を言われても、嬉しい訳がないのに、顔が赤くなったのを見られたくなくて、 視線から逃れたくて、背を向ければ、背後から抱きしめられる。

 背中に感じる肌が熱い。


「仕事で嫌なことがあっても、お前に逢えば忘れられる。もっと頑張ろうと思える。」


 そう言って、後ろから俺の肩口に顔を埋めて、「千聖は、俺のやり甲斐だな。」と呟く。

 それはいつもの同じ台詞で、きっと誰にでも同じことを言ってるんだと思う。

 いつだって自分勝手で、強引…… で、


 ―― うそつきだった。


       *


 余韻が残る身体は、なかなか起き上がる気にもなれなくて、夢と現実の狭間を行ったり来たりしていると、ふわりと、煙草の香りが漂ってくる。

 目を開けると、隣には西脇さんの姿はなくて、シーツにも温もりは残っていない。

 テレビの画面から放たれる光が、薄暗い部屋を照らしている。

 流れてくる音は、ベッドに寝ている俺には、内容が全く分からないほどに、小さく絞られていた。

 西脇さんは、部屋の中央に置いてある小さなローテブルの前で、クッションソファーに、体操座りにような形で座っていた。

 膝頭に肘を置き、指に挟んだ煙草を口元に運びかけて、上半身を起こした俺に気付いたのか、視線を此方へ向けてきた。


「あ、目が醒めた?」


 そう言って、吸った煙草の先が、暗がりで明るく灯る。






続きます。。



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2015年11月30日月曜日

R18BL短編『うそつき』(16)


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(16)



 一人暮らしのアパートまで来て、この人がおとなしく帰るわけないなんて、中学生にだって分かりそうなものなのに。

 一度部屋に上げてしまったら…、もうその後は、なし崩しだった。

 それからは、週に一度、平日の夜にやって来るようになった。

 事前に連絡なんてなくて、いつも突然で。

 俺が遅番でバイトを上がって帰ってくると、部屋の前で大きな身体を丸めるように座り込んで待っている日もあった。

 今夜も、勝手に鍋の材料を買ってきて、「おかえり。」と、部屋の前で、ネギを覗かせたスーパーの袋を持って立っていた。

 いつだって自分勝手で、強引で…


「…… あ……ッ、んぅ、……。」


 男二人で使うには到底狭過ぎる、シングルのパイプベッドの激しく軋む音が、安普請のアパートの部屋に響く。

 絶対隣に聞こえてる。

 だから、せめて声だけでも我慢しようと努力している俺のことなんて、何も考えないんだこの人は。


「もっと可愛い声聞かせてよ。」


 そう言って、唇に押し当てていた手を、シーツに縫い止められて、律動が激しくなっていく。

  突き上げられるように、いいトコロを攻められて、蕩けきった俺の中は、悦んで西脇さんを締め付けて。


「ーあっ、……ああぁ!」


 今まで知らなかった快楽を、また新しく教え込まれて、俺は歓喜の声を上げてしまう。


 悔しいけど……、こんなの嫌だけど……、俺は……

 西脇さんに逢うたびに、この快楽を貰えることを、心のどこかで期待してしまっていたのも事実だった。

 西脇さんも、俺も、ここに愛なんて、無いと分かっていた。


「愛してるよ、千聖。」


 一緒に昇りつめて、余韻に浸る身体を寄せ合って荒い息を吐きながら、西脇さんは、必ずその言葉を囁く。


 ―― 嘘つき。


 俺は、そのたびに心の中で、そう呟いていた。


「千聖は?」



 そして必ず、俺にもその言葉を言わせようとする。

 だけど俺は、毎回別の言葉で誤魔化した。







続きます。。



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2015年11月29日日曜日

R18BL短編『うそつき』(15)


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(15)


 *


 もう二度と、同じ間違いをするもんかと、あの日俺は、心にそう誓った。

 誓ったはずなのに……。

 今のこの状況は、どうなんだ。と、心の中で何度も自分に問いかけてる。


「あれ?どうしたの?もう食べないの?ホント少食だよね、千聖は。」


 俺の一人暮らしのアパートの部屋で、遠慮もせずに鍋をつついている目の前の男に呆気にとられてしまい、俺はさっきから手に持った箸が、口元で止まったままだ。

 まあ、遠慮もせずに、と言っても、材料は西脇さんが買ってきたのだけれど。

 ―― あれから……。

 何度かこの人から、携帯に電話やメールはあったけど、俺は電話にも出ず、メールも返信せず無視を決め込んでいた。

 そうしていたら、そのうち諦めると思ってた。

 担当でもない西脇さんが、店にまでわざわざ来るようなこともしないだろうと、決め込んで。

 そうしたら一週間後、バイトが終わって、通用口から出たら、この人は外で待っていた。

 最初は気付かずに、駅方面へ向かおうとしていた俺を、どこに身を潜めていたのか、後ろから呼び止められて振り向けば、西脇さんが寒そうにコートのポケットに手を入れて、肩をすぼめて立っていた。


『良かった。凍える前に出てきてくれて。』


 それでも見なかったことにして、無言で駅に向かおうとすると、西脇さんに背後から手を取られ、捕まえられてしまった。

 握ってきたその手が、あまりにも冷たくて。

 
『ここまで来てたんなら、店に来れば良かったのに。』と、思わず言ってしまったんだ。


 その一言がまずかった。

 西脇さんは、会いに来てくれたことを、俺が喜んだと思ったらしく、有無を言わさずに、握ったままの手を引っ張って、ずるずると車に乗せられてしまった。


『店に顔を出すのはちょっとね。取引先の営業がバイトくんと個人的なお付き合いするのって、何かとね。』


 そんな事を、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて、言っていた。


 ―― 結局…… 自分が大事っていうわけだ。


『へえ、千聖って、一人暮らしなんだ。』


 話の弾みで、言ってしまった俺が、馬鹿だったんだけど。


『じゃあ、駅じゃなくて、千聖のアパートまで送るよ。』






続きます。。



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2015年11月28日土曜日

R18BL短編『うそつき』(14)


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(14)


 小学生以来かな。

 そんなどうでも良い事を考えながら、仄暗いホテルの部屋で独り、俺はひたすら泣き続けた。

 頭が痛くなるくらい泣いて、俺は漸くバスルームへ向かった。
 
 頭から熱いシャワーを浴びていると、後ろに違和感を感じる。


「……っ、」


 生暖かいそれは、後孔から内腿を伝い落ちていく。

 中に出されたあの瞬間、アイツの言った言葉を思い出して、また頭に血が昇る。


 ――『別にいいでしょ? 男は、妊娠しないから。』


「くっ、最低だ!」


 バスルームの壁を拳で思い切り叩いてみたって、自分が痛いだけでどうしようもないのに。

 馬鹿だ、俺。

 こんな事になったのは、自分にだって隙があったからだ。


 ――『そんなに欲しい?』


 きっと、物欲しそうにしているように見えたんだ。誘われて、結局此処まで従いてきてしまったのは自分なんだから。

 ホント、馬鹿だ…俺。


 ―― 帰ろう……。


 泊まっていけばいいなんて言われたけど、こんな所で朝までゆっくり過ごす気になんてなれない。


 シャワールームから出て、自分の服がどこにあるのかと、部屋を見渡すと、下着と靴下は、綺麗にソファーの上に置かれていて。


「あれ…… 他の服は……?」


 クローゼットを開けてみると、コートと中に着ていたシャツや、ジーンズなどが綺麗にハンガーに掛けられていた。

 何これ……、無理やりホテルの部屋に連れ込んだにしては、丁寧過ぎるだろ。


 ――『…吐いたりして服を汚してもいけないしね。』


 ああ言ったのは、あながち嘘でもなかったんだろうか。そんな事が頭を過るけど、すぐに首を振った。


 ―― そんな訳ないだろ。


 良い様に考えたって、アイツがしたことは変わらないんだから。





続きます。。



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2015年11月27日金曜日

R18BL短編『うそつき』(13)


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(13)


 驚いて見上げると、西脇さんは悪戯っぽい笑顔を俺に向けた。


「俺の連絡先、入れておいた。」


「ええ? 勝手に?」


 俺は、驚きと怒りで、固まってしまって、相手を罵ることすら忘れてしまっていた。

 そんな俺を、気にも留めずに、西脇さんはコートを羽織り、鞄を手にすると、俺の頬にリップ音を立ててキスを一つ落とした。


「じゃあ、また連絡するね、おやすみ。」


 手をヒラヒラさせながら、足早に部屋のドアへと向かう後ろ姿を、ただ呆然と眺めているだけの俺。

 やがてドアを開いて、その姿は外へスッと消えて、ドアの閉まる音が虚しく部屋に響いた。


「えっ、ちょっ、待てって……うわっ!」


 我に返って、慌ててベッドから降りようとして、纏わり付いた上掛けに脚を取られてしまう。

 無惨にも、床に倒れ込み、額を打ち付けてしまった。


「いって……っ、くっそっ!」


 ああ、もうなんだか、カッコ悪いっていうか、情けない。


「ちょ、酷くないか?これ。」


 俺だっていっぱしに、夢があったんだ。
 
 男同士なんて、好きになった相手には、なかなか告白もできないし、上手くいくなんて夢のまた夢だったけど、それでも、初めての時はもっと…。


 ―― もっと、何だって言うんだよ。


 どうせ、好きなやつなんて出来ても、上手くなんていくわけないんだから、夢をみたって仕方ないじゃないか。

 こんな風に軽く扱われるのが、俺にはお似合いなんだ。

 だけど……


「…… う……っ、」


 置いて行くなんて、あんまりだ。

 あんな奴に、俺の初めてを何もかも奪われたなんて、情けなくてしようがない。


「くっそ…… 涙が止まらない。」


 後から後から出てくる涙を止められなくて、俺は床に額を擦り付けた。


 ―― どうせなら、涙が枯れるまで、思い切り泣いてやるっ。


「うーっ、…… うっ、ひぃっく」


 いったい、いつぶりだろう、こんなに声を出して泣くのは。






続きます。。



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2015年11月26日木曜日

R18BL短編『うそつき』(12)


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(12)



広げさせられた脚を、肩に担がれて、挿入の角度が変わる。

 唇に押し付けていた手は、シーツに縫いとめられた。


「愛してるよ、千聖。」


 嘘の言葉を吐きながら、口づけられる。

 嘘だと分かっているのに、俺の身体は、その言葉にいちいち反応して、勝手に熱くなっていった。

 西脇さんにとっては、ただの遊びで、俺は…… ただ、騙されて無理やり快楽を教え込まれているだけで。

 ここには、愛なんてものは無いのに。

 西脇さんは、嘘をたくさん吐きながら、俺の身体をこれ以上ないくらいに優しく抱いた。

 俺も……いつの間にか、その優しい嘘に……悦んで、騙されていた。

 ただの嘘だと、分かっていたのに。



       *



 ―― 遠くで、話し声が聞こえてきて、意識がゆっくりと浮上する。

 声…… ああ、そうか、俺……西脇さんに……。

 重い瞼を開けると、シャワーを浴びたのか、腰にバスタオルを巻いた西脇さんが、携帯を耳にあてて立っている姿が見えた。


「―うん、今から帰るよ。…だから、今日は催事応援だったから、遅くなったんだよ。ああ、飯は要らない。」


 通話を終えて、携帯をソファーに放り投げて、さっさと服を着始める西脇さんを、俺はボンヤリとした頭で眺めていた。


 ―― あれ?帰るのかな。じゃあ、俺も……。


 だけど、起き上がろうとすると、腰に鈍い痛みを感じて、またうつ伏せのままシーツの海に沈む。


「あ、起きた?」


 それに気付いた西脇さんが、此方へ近付いてくる。


「俺、帰らないといけないんだけど、千聖はゆっくり泊まっていきなよ。」


 そう言って、ポンっと携帯を枕元に投げた。


「……え?」


 それは、西脇さんのではなくて、俺の携帯。





続きます。。



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2015年11月25日水曜日

R18BL短編『うそつき』(11)


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(11)


 ずっと……二十年間、キスだって経験したことがなかった。

 誰かと、こんな事をしてみたいって、心のどこかで思ってたなんて、今日会ったばかりのこの人に、知られてしまったことが恥ずかしい。


「―― あっ、」


 背後から、熱い塊が窄まりに当てがわれて、反射的に這うように前へ逃げた俺に、西脇さんは、「逃げちゃ駄目でしょ。」と言って引き戻す。

 初めて他人のそれを受け入れることへの怖さと、そして期待で、頭の中が一杯になってしまっていた。

 こんな事、駄目だと思っているのに、だけど頭の中でもう一人の俺が、悪魔のように囁いている。


 ―― いいじゃん、やってみたかったんだし。――


「何、ごちゃごちゃ考えてんのっ?」


 そう聞こえた瞬間に、押し付けられた塊が、小さな窄まりを割り広げて挿ってきた。


「っう、」


 痛みはあったけど、我慢できない程じゃない。思っていたよりも滑らかに、奥への細い道を開いていく。


「……初めてなのに、柔らかいね。千聖がエッチな子で良かった。」


「―― あっ……、や……!」


 前に回った西脇さんの手に、胸の尖りを弄ばれて、無意識に後ろを締め付けてしまっていた。


「いい締めつけだな。中がまるで悦んでるみたいに絡み付いてきてる。」


「――言う、なっ、」


 言葉に煽られるように、腰の奥が熱く疼く。

 じわりと自分の先端から溢れてくる雫が、シーツを汚しているのを認めたくなくて、目を逸らした。


「可愛いね、千聖。」


 耳元で、また嘘を囁いて、西脇さんが腰を動かし始める。


「―っ、あ……ぅ、―っ、」


 自分のとは思えないような、甘い声を漏らさないように握った拳を、唇に押し当てた。

 初めてなのに、身体の中は快感を拾って、勝手に収縮する。

 内壁を擦る、焼け付くような熱い杭を、自分から更に奥へと誘い込むように。


「声、もっと聞かせてよ。」


 身体を反転させられる。




続きます。。



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2015年11月23日月曜日

R18BL短編『うそつき』(10)


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(10)


ずっと誰にも言えなくて、どうしたら良いのか分からなくて。だから今まで誰とも付き合ったことなんてない。


「ふーん、じゃあ、自分で時々弄ってたの?」


 その質問には、答えなくてもきっと……更に熱くなった顔で、全て見透かされてしまった。

 
「……千聖って、見かけによらず、エッチなんだね。」


 そう耳元で囁かれただけで、身体が大きく震えた。


「―― あ、ッ…… あ、」


 勝手に跳ねる腰を、上から押さえ付けられて、ビクビクと西脇さんの手の中で堪え切れない欲を放ってしまうのを止めることなんて出来なかった。


「いっぱい出たね。そんなに気持ち良かった?」


 呆気なく、達かされてしまった事が恥ずかしくて悔しくて、白濁で汚れた手を見せつける西脇さんから目を逸らした。


「じゃあ、こっちは?此処も自分でした事ある?」


 まだ余韻の残る身体を、簡単に反転させられて、腰を高く引き上げられた。


「―― あっ、イヤッ」


 ぬるりとしたものを纏った指先が、後ろの入り口をつつく。
 
 身を捩ろうともがいても、しっかりと片手で腰を固定されて、動きは封じられてしまった。

 次の瞬間、つぷっと指が挿し込まれる。


「ん……っう、」


「柔らかいね。昨夜もしたの? 誰かにこんなことをされてるのを想像しながら?」


 中を掻き回して、わざとらしく水音を立たせながら訊いてくる。


「―― それいじょ……っ、言うなっ、」


 はいはいと、笑い混じりの声が聞こえて、指が引き抜かれていくその拍子に吐息が洩れた。


「じゃあ、もう挿れていい?」


 そう言われて、肩越しに振り返ると、西脇さんが服を脱ぎ始めていた。

 服の下に隠されていた、程よい筋肉の付いた美しい身体が露わになり、思わず息を呑んだ俺に気が付いて、西脇さんは艶然と微笑んだ。


「そんなに欲しい?」


「なっ、違……、」


 否定しようと出した声は、西脇さんの咥内へと呑み込まれて消えてしまう。

 思わず見惚れてしまっていたことも、この人には見透かされていると思うと、羞恥で体温が一気に上昇した。





続きます。。



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2015年11月22日日曜日

R18BL短編『うそつき』(9)


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(9)


「可愛いね、キスだけで感じちゃったの?」


「な? うわっ!」


 上掛けをパッと捲られて言われた言葉に、俺が何も着ていないことに、初めて気が付いた。


「アンタ、本当に最低だ。」


「だって酔ってたから、苦しそうだったし、吐いたりして服を汚してもいけないしね。」


 そんな子供騙しな嘘をよく言うと、呆れてしまうけど、下から睨んだくらいじゃ、この人にはちっとも効きそうになくて。

上掛けを剥ぎ取られて、さらけ出された肌が、西脇さんの視線に灼かれたように熱い。

 さっきのキスだけで、しっかりと勃ち上がっているそこに、西脇さんの指が絡められて、思わず身体が跳ねた。


「あっ、や、……ッ」


 跳ねる身体を押さえ付けるように、西脇さんが体重を掛けてきて、また唇が塞がれる。

 俺の咥内を弄びながら、片手は俺の屹立を握り上下させ、もう片方の手の指先が乳首を弄る。


「―ッ、ん……、うぅ……っ!」

 
 西脇さんの手が上下する度に、溢れ出す先走りがクチュクチュと淫らな音を立てた。
 
 人に触られるのなんて初めてで、もうすぐにでも達してしまいそうな予感に、俺は慌てて首を横に振って、キスから逃げた。


「―いやっ、だっ!」


 そう訴えているのに、返ってきた言葉は、


「愛してる、千聖。」


 そうして、唇が首筋から胸へと下りていく。

――愛してる、なんて、この人はきっと誰にでもそんなことを言ってるんだ。奥さんがいるのに、そうやって適当に遊んでいるんだ。

 そう分かっているのに、与えられる刺激に身体はすぐに反応してしまう。


「…… あ……っ、」


 唾液を含んだ舌に、硬く尖った胸の先を転がされて、思わず背中が撓る。


「あれ、ここ気持ちいいの?もしかして、もう誰かが開発済みだった?」


「ーッ違……!」


 言われた言葉に顔が熱くなる。自分が女の子に興味がないって気が付いたのは、いつだっただろう。

 いつも気になってしまうのは、同性ばかりで。






続きます。。



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2015年11月21日土曜日

R18BL短編『うそつき』(8)


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(8)


「美味しい?」


 唇が僅かに触れるような位置で、西脇さんが艶然と微笑む。

 なんでこんな事になってるんだ? 頭の中がパニクって、何がなんだか分からない。

 いや、待て、冷静になろう。まず今、なんでホテルの部屋にいるのか確認してみよう。

「あの、なんで俺、ホテルの部屋にいるんでしょう?」


「なんでって、千聖、酔っ払って寝ちゃったから、俺が部屋取って運んであげたんだけど?」


 ―― 酔っ払って? ……グラス一杯のワインで? いやいや、そんなわけないだろう。


「あのワインに、何か入れましたよね?」


「俺が? 何を入れたって言うの? 千聖、エロ小説の読み過ぎじゃないの?」


 西脇さんは手を伸ばして、グラスをベッドサイドチェストに置くと、またギシリとスプリングを鳴らして、俺へ覆いかぶさるように、唇を寄せてくる。


「え、わ、わっ、何するんですか!」


 紙一重で首を横に振ってそれを躱すと、今度は両手で頬を挟まれて固定された。


「何って、キスしたいんだけど。」


「な、に、言ってる……っ、」


 言葉は柔らかい唇に触れられて、阻まれてしまった。

 引っ張るように上唇を食んで、至近距離に見つめられる。


「してもいいでしょ?」


「……訊く前に、してるじゃないですかっ。」


 西脇さんの胸を両手で押し返そうともがくけれど、なんだか身体が怠くて全然力が入らない。

 ―― ワインに何も入れてないなんて、絶対嘘だ!


「……店で初めて千聖を見た時に、運命を感じたんだ。」


 ―― そんな調子のいい嘘、中学生だって信じない。


「ふ、ざけ……ッ、ん、」


 また唇で塞がれる。

 すかさず咥内へ侵入してくる舌に、奥へと逃げようとする俺のそれは、難なく絡め捕られてしまった。

「ーッ、……ん、……、」


 熱い舌に翻弄されて、自分の下肢が熱くなっていくのを感じる。

 キスをされているだけなのに、こんなに感じてしまうのが、恥ずかしくて情けない。

 動かない身体で、唯一抵抗の意思を示していた、西脇さんのシャツの袖をギュッと掴んでいた指先からも、力が抜けていく。





続きます。。



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2015年11月20日金曜日

R18BL短編『うそつき』(7)


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(7)


「……な……に……言って…… 結婚してる…… くせに……。」


「大丈夫、俺、男も女も、どっちもいけるタイプだから。」


 は?…… そういう問題じゃないと思うんだけど…… と、反論したいのに、何故か上手く喋れなくて、なんか瞼が重くて。


―― あれ? どうしたの? ――


 西脇さんの声が、すごく遠くに聞こえた気がしていた。



       *



 唇に何か冷たくて柔らかいものが触れて、僅かに開いた隙間から咥内へ少量の水が流れ込んでくる。

 なんだか凄く喉が渇いていたから、俺は戸惑うことなく喉を鳴らして、それを飲み込んだ。


 ――あれ? なんだ? 今の……。


 なんか夢をみていたような気がするんだけど……

 漸く意識が覚醒してきて、薄く瞼を開けると…… 綺麗過ぎる男の顔が目の前にあった。


「目、覚めた?」


「はぁ。」


 至近距離に見える西脇さんの顔が、うす暗い灯りに照らされていて、その後ろには見たことのない天井が……。


 ――え?


 俺は驚いて起き上がろうとした。

 だけど身体が重くて、いうことを利かない。


「どうしたの?もっと飲む?」


 そう言って、ベッドの縁に座っている西脇さんは、手にしているグラスを揺らした。

 カランと、グラスの中の氷が音を立てる。

 上手く思考が働かなくて、今の状況が掴めない。


「あ、あの、ここどこですか。」


「どこって……、ホテルの部屋だけど?」


 そう言って、西脇さんはグラスの水を口に含んで、俺の唇にそれを重ねてきた。


「―― んっ!」


 唇の隙間から、さっきよりも多めの水が、俺の咥内に送り込まれてくる。

 口端から一筋溢しながら、流込んできたそれを、俺はどうすることもできずに、コクッと音を立てて、飲み込むしかなかった。




続きます。。



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2015年11月19日木曜日

R18BL短編『うそつき』(6)


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(6)



「それはそうかもだけど……」


 なんか適当な嘘で騙されたような、納得いかない気分だ。


「そういう千聖は、彼女いるの?」


 応えにくい話題をこちらに振られて、ちょっとだけ恥ずかしいのを隠す為に、目の前のワイングラスを手に取って、コクコクと喉へ流し込んだ。

 ワインのことなんて、もともと全然知識も無いんだけど、味なんて美味しいのか不味いのか、まったく判らない。


「…… いませんよ。」


 空になったグラスをテーブルに置くと、西脇さんは「いい呑みっぷりだね。」と、クスっと口角を上げてから、「じゃあ、彼氏は?」と続けた。



「……は?」


まさか、そんなことを質問されるとは思っていなくて、俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


「それもいないの?」


 焦る俺の顔を面白がるように、ニヤニヤしながら見つめてくる。

 これは絶対、からかわれている!

 そう思うのに、顔どころか、身体中が熱くなってきて、何を喋ったらいいのかも分からなくなってしまった。

 飲み慣れないワインなんて、一気に飲み干したりしたから、酔いが回ってしまったのか、目の目の西脇さんの顔も、ゆらゆらと揺れているように見える。


「…… お、おれ、は男ですよ? 彼氏なん、て…」


 西脇さんが立ち上がって、俺の隣の席の椅子を引いて、そこに座る。

 なんだか…… 綺麗な顔が、至近距離に見えた。


「でも、千聖って、ゲイなんでしょう?」


――え?


「……ちがい、ます。」


 なんで分かったんだ? 俺が、女の子には全然興味がないって。昔から、好きになるのは、いつだって男だった。でも、なんで初対面のこの人に、そんなこと……


「分かるんだよね、なんとなーく。」


 耳元に、息が吹きかかっている気がするんだけど、気のせいなんだろうか。


「ねえ、じゃあ俺の恋人にならない?」






続きます。。



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2015年11月18日水曜日

R18BL短編『うそつき』(5)


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(5)



    ***



「…… なんでこんなところで。」


 西脇さんに連れてこられたのは、高級ホテルの最上階のレストランで、しかも個室。

部屋の真ん中の丸くて大きなテーブルに、二人きりで今、メインディッシュのステーキを食べている。


「え?美味いだろう?」


「…… そうじゃなくて……、こんな高そうなところで、しかもこんなカジュアルな普段着なのに。」


「ああ、そんなこと気にしなくていいよ。ここ俺の知り合いのホテルだから。」


 そういう問題でもないと思うのだけど! 西脇さんは俺の心配なんて気にも留めない様子で、
「服装だって、個室なんだから、どうってことないでしょ?」と、笑う。

 それはそうだけど、こんな高級な場には慣れていないし、居たたまれない感でいっぱいだった。それに、ずっとこの人のペースで会話が進んでいくのが、なんだか悔しい。


「ところで、ワインなんて呑んで、車の運転が出来なくなるじゃないですか。」


 頭の中に浮かんだことを、そのまま口に出してやる。どうだ。言い返せないだろう? と、思っていたのに、それくらいの嫌味なんて、軽くあしらわれてしまう。


「え? いいんだよ、今夜はここで泊まればいいし。」


―― え?

―― その言葉に絶句する。

 なんだよ、俺を家まで送るって言ったくせに、自分は最初からここで泊まるつもりだったのか!

 心の中で舌打ちをしながら、ステーキをフォークに刺して口に運ぶ西脇さんの左手の薬指に光るものを見つけて思わず、「…… あ、」と、声を漏らした。




「ん? あぁ、これ? 結婚指輪がどうかした?」


「結婚してるんですか?」


「そうだけど? なんで?」


 だって……、


「さっき、独りで食事するのは、嫌いだって言ってたから、てっきり……」


 俺の言葉に西脇さんは、少し考えるようにして宙を見る。

そして暫くしてから漸く、「ああ! そう言えば、そんなこと言ったね。」と、悪びれもせずに笑った。

「嘘……だったんですか。」


「いや嘘じゃないよ。結婚はしてるけど毎日嫁さんと二人で食事するとは限らないでしょう?」





続きます。。



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2015年11月17日火曜日

R18BL短編『うそつき』(4)


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(4)


 ああ、もう! 面倒くさいな。」



そう聞こえた瞬間、背後から肩を掴まれて引き戻されてしまう。


「え?ちょっ……」


そのまま肩を抱き寄せられて駅とは真逆の方向へ歩き始める。


「いいから、ね?ちゃんと家まで送ってあげるし。」


「そんな! いいって言ってんのに!」


「そんなにキャンキャン吠えないの。別に取って食おうってわけじゃなし。」


「でも!」と、否定をしようとすると、人差し指を軽く唇に当てられて、言おうとした言葉を思わず飲み込んでしまう。



「俺、独りで飯食うの嫌いなの。付き合ってよ、ね? 千聖は腹減ってないの?」


「……減ってませんてば。」


昼食を食べたのは三時過ぎていたんだ。別にそんなにまだ減ってない……と、言いたかったのに、実は、昼間は食欲がなくて、俺はハンバーガー一個しか食べていなかった。


 ぐぅぅ……


間の悪いことに、こんな時に腹の虫が鳴くなんて!


「ほらね?千聖も腹減ってんじゃん。」


「……う、」


 言われて顔があり得ないほど熱くなっていく。もうそれ以上反論できなくて、口を噤んでしまった。

 クスッと漏らした笑い声と共に、吐き出された息が耳に落ちてきて、身震いする俺の肩を抱いたまま西脇さんは歩き出す。



「ちょ、分かりましたから、離してくださいってば。」


俺の肩に回している手を振り払い、身体を離したのに、間髪入れずにまた抱き寄せられた。


「いいじゃん、寒いんだし、くっついている方があったかいでしょ?」


 回された手が、さっきよりも力強い。この人のペースに巻き込まれて、俺の意思なんて全く無視されているのが悔しい。

 でも……、ちょっと周りの目が気になって恥ずかしいけど、ここで騒いでしまうよりも、早く駐車場まで行ってしまった方が良いと考え直して、俺はもうそれ以上抵抗することを諦めた。






続きます。。。

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2015年11月16日月曜日

R18BL短編『うそつき』(3)


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(3)


「うん大丈夫、応援もいっぱい来てくれてるし、昨日も準備で遅くなっちゃったし、今日は上がって。」



「はい、じゃあすみません、お先です。」


 店内を見渡すと、背の高い西脇さんが接客をしている姿が遠くに見えた。

まだまだ忙しそうな売り場を見ていると、バイトとはいえ、先に帰るのは気が引ける。

俺は店長にだけ挨拶をして、店を後にした。



       *


 従業員出入り口から外に出ようと重い鉄の扉に手をかけたところで、誰かが盛大に靴音を響かせながら階段を下りてくるのが聞こえていた。

 今日はどの店も忙しいからな… と思いながら振り返らずに扉を開けて、一歩外に踏み出した。


「―― ちょっ、待ってよ、千聖!」


名前を呼ばれてびっくりして振り向くと、西脇さんが大股で駆け寄ってくる姿が見えた。


「どうしたんですか?」


「どうしたじゃないよ、冷たいなあ、俺を置いて帰ってしまうなんて。」


息を切らしながらそんなこと言われても、返答に困ってしまう。


「俺、今日は十九時上がりのシフトなんですよ。西脇さんは最後まででしょう? 高岡さんもまだ残っているし。」


「何言ってんの、俺は応援要員だよ? あいつは担当だから最後までだけど!」


 だから、俺はもう帰ってもいいの! と続けながら、手に持っていたコートを羽織る。


「へえ、そうなんですか。じゃあ、お疲れ様でした。」


そう言って、先に歩き出すと、「ちょ、ちょっと待ってってば。」と、慌てた様子で追いかけてきて、腕を掴まれた。


「何ですか?」


「何って、駐車場はあっちだよ?」


掴んだ俺の腕を引っ張りながら、西脇さんは、駅とは逆方向を指差している。


「俺、電車なんですけど……。」


「だからさ、俺が車だから! 飯でも食いに行かない? って誘ってんだけど。」


「え? いや、結構です。」


何言ってんだろこの人。取引先の、しかもアルバイトを食事に誘うなんて、聞いた事が無い。

あまり関わらない方が良いかもしれないと思って、俺は踵を返し、さっさと歩き出した。

もちろん駅方面へ。




続きます。。。

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2015年11月15日日曜日

R18BL短編『うそつき』(2)


はじめにこちらをお読みください。




(2)


「こいつもまだ休憩行ってないんだけど、この辺初めてだからさ。」


「え…… はい、いいですけど。」


 こいつ、と高岡さんが指差したのが、あの一際目立っていたイケメンだった。

「悪いね。」と、にっこり笑ったその人は、優しそうな上に、文句なしにカッコよくて、大人な感じで、俺はその笑顔にすっかり騙されてしまった。




      *


 もう三時も回っているのに、飲食店はどこもいっぱいで、結局てっとり早くファーストフードの、ガラス張りで通りに面しているカウンター席に座り、肩を並べてハンバーガーを食べた。




「へえ、君、バイトくんなんだ。えーと.…」



「樺木です。」


俺がそう応えると、その人は笑いながら言った。


「樺木くん?じゃあ、かばちゃん…?」


――か、かばちゃん…?


名字で、そんな風に呼ばれたのは初めてで、しかもずっと年上で取引先の初対面の人に言われて、冗談なのか本気なのか分からずに、俺は一瞬固まってしまった。



「て、呼んでもいいけど…、うーん、そうじゃなくて下の名前、なんだっけ。」


「ち、千聖です。樺木千聖。」


「そうそう、千聖だ。さっき店長に名前呼ばれてたじゃない。うん、可愛い名前だね、じゃあ千聖って呼んでいい?」


――な? いきなり呼び捨て?


「あはは、真っ赤になっちゃって、可愛いな千聖は。」


「か、可愛くなんかないです!」


 なんか、見た目はモデルみたいだし、カッコいいし、大人だって思っていたのに、中身は全然違うっ!


「俺は、西脇志芳(にしわき しほう)っての。あ、志芳って呼んでね。」


見た目の好印象とは違い、中身は軽いっていうのが第一印象だった。


          *


「千聖くん、もう時間だし上がっていいよ。お疲れ様。」


店長に言われて時計を見ると、十九時を回ったところ。

営業時間は二十一時までだけど、俺の今日のシフトは十時から十九時までだった。

 まだ店内は、かなりの入りで商品も乱れに乱れている。


「大丈夫ですか?俺、少しくらいなら残業しても良いですよ?」





続きます。。。

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2015年11月14日土曜日

R18BL短編『うそつき』(1)


はじめにこちらをお読みください。




(1)


『じゃあ、土日に泊りがけで何処か行こうか。』

『そうだな、温泉とか行かない?部屋に露天風呂がある処とか。』

 俺を喜ばせるような約束ばかり沢山して、結局貴方は一度も守ってくれることは無かったね。

守れない約束なんて、最初からするなよな。

いつだって、『どうせまた……。』って、分かっているのに期待してしまう。

『今度来るときは、泊まるよ。』

そんなこと無理だってことくらい、分かってるよ。

週末は、貴方と奥さんのものだって、ちゃんと分かっていたし、文句なんて言ったことなかった。

       *

あの人と出会ったのは、俺がバイトをしていたファッションビルの周年祭の催事の時。

取引先のアパレルメーカーから応援に来ていた中の一人だった。

 いつも営業に来ていた担当は別の人だったけど、その日は売り出し初日で、人員が足りないから、どのメーカーも担当以外に応援人員として何人か出してくれていた。

 勿論、自分のところの商品をより目立つ所に陳列して、少しでも売り上げを上げる為だけど。
背が高く、少し日本人離れした端正な顔立ちのその人は、初対面の人が何人もいる中でも、一際目立っていた。

「ごめんね、千聖(ちひろ)くん、遅くなったけど休憩に行ってきて。一時間取ってくれていいから。」

 店長にそう言われた時は、もう午後三時を回っていた。

「はい、じゃあ行ってきます。」

「あ、千聖くん、悪いけど、こいつも連れてってくれる?」

バックヤードから出たところで、俺を呼び止めたのは、取引先の中では、わりと顔見知りで、よく話をすることのある、高岡さんだった。



続きます。。。

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2015年11月11日水曜日

2015年11月9日月曜日

うごイラ

こないだから作っていた動くイラストやっと完成しました(゚ー゚;

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=53466177
ちょっと重いかもしれないので、
小さ目で載せてます。

もう少し大きいのは、pixivの方にupしています。
 ↓

クリスタで動くイラスト作れるようになっ嬉しいんですけど、
うーん、
なかなか使いにくい気がしてます。
作ったイラストをgifにするには、一度連番画像を作成するんですけど、
時間かかり過ぎるし、
書きだした連番画像の劣化具合が酷い・・・
みんなどうしてるんだろぅ・・・(゚ー゚;

あれこれやってみて、なんとかまだ見れるかな・・・にこぎつける事ができたかな。。

いやしかし、、疲れました(゚ー゚;

とりあえず、完成できたので、、
明日からは、albumの更新がんばります!≦(._.)≧ ヘ



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2015年11月5日木曜日

近況とgifアニメ


先日upした『album』(5)~(6)で使ったイラストですが、
実は、下描きで数枚描いていました。
それで、ちょっと遊んでいたのですが…

 う、動いているかな…(゚ー゚;

たった5枚で、動かすのも無理があるような感じです(゚ー゚;

これは、古~~いフォトショで作ったのですが、
こないだクリスタのアプデで、アニメーションが作れる機能が付いちゃったんで、
よせばいいのに、弄りだして、これに色なんか付けちゃってるもんだから、
次の更新に進めないとか、はぁ…何やってんの私w

でもやりかけってのもアレなので、とりあえず完成させてみようと思う(´Д`)

あとは、今、ついったに鍵をかけてしまっていますけれども・・・
前に旧ブログの時にもやったのですが、、
 F o r b i d d e n F r u i tの、トンちゃんと
李央と伊織の、イケナイ140リレーSSやってます。

前のは、わりとかるーくエロだった気がしますが、
今回のは、ちょっと本気モードで書いてる部分があるので、…ね。(*v.v)。

またあとで、イラスト付けて、pixivに上げるとは思います。


あ、そうだ。
そういえば、去年の2月頃?に、トンちゃんとカリちゃんと私の3人でコラボした企画
 『Double Connection』で、
http://nanos.jp/aimikari/novel/13/

描かせていただいた挿絵をpixivにUPしていましたが、
 


今更なのですが、先日R18で閲覧制限をかけました。
タグだけR18にしていても問題ない絵かなーとは思っていたんですけど、
まあ、なんか問題あったらと思うと気になるので。
なので、R18ということで、インしないと閲覧できない仕様になっています。
≦(._.)≧ よろしくお願いいたします。

企画ページの方の挿絵よりも、大きい画像を置いています。


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2015年10月28日水曜日

『album』―ESCAPE―extra(5)~(6)

(HP版で読む)




  カズヤさんのことを初めて知ったのは、

 僕が中学1年の時。

 とても暑い夏の日のことだった。

 カズヤさんも、僕の存在を長い間知らずにいた。

 そんな二人が一緒に暮らすことになった。

 『でも僕は、貴方のことを、これからも父親だとは思えないかもしれないよ。』

 口から出ていく言葉は、本心かもしれなくて、そうじゃないかもしれなかった。

 『それでもいいよ。』と、カズヤさんは言った。



 ―― 時々おじさんの話に付き合ってもらえると嬉しいんだけど…。

 ―― 別に、構わないけど。


  カズヤさんは嬉しそうに僕をギュッと抱きしめた。
http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=1

 ―― だから今、 


  僕はここにいる。――

http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=1

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2015年10月21日水曜日

『album』―ESCAPE―extra(4)

(HP版で読む)


 「おはよう伊織。」

 柔らかな声で名前を呼ばれて振り向くと、

 ドアを開いて入ってきたその人は、

 たった今、起きましたという顔で。

 髪はボサボサで、パジャマのままで。

 にこにこと笑って僕を見つめて立っていた。

 優しい眼差しに、胸の中がほっこりと暖かくなった気がする。
http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=1



 僕には二人の父親がいる。

 ひとりは、僕が生まれた時からずっと傍にいてくれた人。

 母さんを愛して、僕を育ててくれた父さん。

 そしてもうひとりが、目の前にいる、母さんの恋人だった人。

「おはよう、カズヤさん。」




 ― 4 ―
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2015年10月7日水曜日

『album』―ESCAPE―extra(3)

(HP版で読む)



  僕は、僕の通っていた高校の担任だった

 藤野先生のことを思い出していた。

http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=1
 昨日の朝の味噌汁の味を思い出していた。  

 二人してバカみたいにいつもよりも沢山作って、

 久しぶりにお腹がいっぱいになったことを

 … 思い出していた。  
http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=1


  そして…、    


 独りで食べるのが少し寂しいなんて思ってる。 

 … 慣れているはずなのに。

 ― 3 ―
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2015年9月30日水曜日

『album』―ESCAPE―extra(2)

(HP版で読む)





 「伊織さんも、洗濯物がありましたら出してください。」

「…僕はいいよ。自分でするから。」

「そうですか。」

 と、それだけ言って、その人はさっさと部屋から出て行ってしまった。

 言われたことだけ、そつなくこなす、

 まるでロボットみたいだと思うと、ちょっと笑える。

 食卓の上に並んでいるのは、数種類のパンと、

 ふかふかで綺麗な色をしたオムレツに、サラダやスープ。


 僕は席につき、ため息をひとつ零した。

 柔らかなオムレツにナイフを入れると、中からとろとろの半熟卵が溢れ出した。

 せっかく美味しそうなのに。

 全部食べれる気がしない。

http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=1
― 2 ―

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2015年9月29日火曜日

絵本風SS『album』連載開始しました。


昨日、表紙と1ページ目だけupしています。

HP版 ★ブログ版

 ESCAPEの番外編で、岬親子の後日談的お話。
伊織が鈴宮の家を出て、岬の家に行くところですね。

この親子はBLな関係にはならない(はずw)なので、
今回はBL要素はありません。(*_ _)

読んでほっこりできるような作品に仕上げたいなぁと思っていますので、
ちょっとお茶の時間にでも、ちらっと覗いてもらえると嬉しいです。

絵本風というか・・・
全部のページに挿絵が入る(予定)です。
毎ページに挿絵を!と思って、何枚か描き溜めていますが、
1ページに入る文字数が少ないので、
もしかしたら20ページくらいになるんじゃ・・・とちょっと焦っています(゚ー゚;
のんびり更新していきますね。


HP版の方は、文字とイラストを一緒にレイアウトしていて、
fc2のweb漫画用のアルバムメーカーを使っています。
なので、試しに文字を縦書きに配置してみました。

してみたら、意外に文庫本ぽくなった気がして気に入っています(〃∇〃)
昨日、背景の絵と字の組み合わせが合ってると言ってもらえて、
めちゃ嬉しかったです♪

アルバムメーカーは、画像を下へスクロールするか、画像タップで次ページに移行する仕様になっています。
ただ、スマホからだとピンチアウトが出来ないようなので、
機種によっては字が小さいんじゃないかとちょっと心配しています。
もし、何か不具合ありましたら教えていただけると助かります。≦(._.)≧ ペコ

ガラケーからは閲覧できないので、
ブログの方では、文字とイラストを別々にして普通にupしていきます。


あと、 ESCAPE関連の作品indexを作りました。
    ↓
『ESCAPE』series

ESCAPE関連は このページにまとめていこうと思います。
ああ、まだHPの方に繋げていない!(´Д`;)

よろしくお願いいたします┏○ペコッ


ブログ版 ― 1 ―

HP版 『album』TOP



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2015年9月28日月曜日

『album』―ESCAPE―extra(1)

(HP版で読む)



 高校二年の夏の終わり、僕は僕と血が繋がっているという父親と一緒に暮らすことになった。

 どこかの会社の社長だって訊いていたから、どんな豪邸に連れて行かれるのかと思っていたのに、

 その人…、岬 一哉は海の近くの小さな家で独りで暮らしていた。

 一人暮らしのわりに、綺麗に片付いている。

 この人、掃除なんかするのかな。

 
 だけど翌朝起きたら、岬の家の使用人だという男の人が、朝食を準備してくれていた。

「おはようございます。旦那様はまだお休みのようですので、先に朝食をすませてください。」

 その人は無表情でそう言うと、昨日脱ぎ散らかしたままの、あの人の服を拾い集めていた。


http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=1


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2015年9月10日木曜日

ESCAPEイラスト/グッズ販売のお知らせ

  ESCAPEの伊織と、岬パパの小話の挿絵にしようと描いたイラストなんですが、

、 (↓クリックすると ESCAPEギャラリーに飛びます。少し大き目のイラスト置いてます。)
http://sweetsweetparadise.web.fc2.com/illustescape.html

ツイッターにUPしたら、
この絵のタペストリーが欲しい!などと、フォロワーさんに言ってもらって、
まさか!冗談だよね…とは思ったんですけど、
なんだか、自分でこのイラストのトートバッグが欲しくなっちゃって(゚ー゚;

作っちゃいました(笑)

https://sweet-paradise.booth.pm/
サイズはMで、プリントは中と小の2種類あります。
BOOTHで販売中です。

タペストリーは、10単位じゃないと作れなかったので、
今回はトートだけにしましたが、
せっかくBOOTH開設しちゃったので、
また何か作ろうと思います(゚ー゚;

ほとんど自分用なんですがo(^▽^)o
このトートも、生地の影響出る部分とか妄想しながら見本デザイン描くのが
楽しすぎたです(〃∇〃)



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