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2015年11月29日日曜日
R18BL短編『うそつき』(15)
はじめて読む方は、こちらから。
(15)
*
もう二度と、同じ間違いをするもんかと、あの日俺は、心にそう誓った。
誓ったはずなのに……。
今のこの状況は、どうなんだ。と、心の中で何度も自分に問いかけてる。
「あれ?どうしたの?もう食べないの?ホント少食だよね、千聖は。」
俺の一人暮らしのアパートの部屋で、遠慮もせずに鍋をつついている目の前の男に呆気にとられてしまい、俺はさっきから手に持った箸が、口元で止まったままだ。
まあ、遠慮もせずに、と言っても、材料は西脇さんが買ってきたのだけれど。
―― あれから……。
何度かこの人から、携帯に電話やメールはあったけど、俺は電話にも出ず、メールも返信せず無視を決め込んでいた。
そうしていたら、そのうち諦めると思ってた。
担当でもない西脇さんが、店にまでわざわざ来るようなこともしないだろうと、決め込んで。
そうしたら一週間後、バイトが終わって、通用口から出たら、この人は外で待っていた。
最初は気付かずに、駅方面へ向かおうとしていた俺を、どこに身を潜めていたのか、後ろから呼び止められて振り向けば、西脇さんが寒そうにコートのポケットに手を入れて、肩をすぼめて立っていた。
『良かった。凍える前に出てきてくれて。』
それでも見なかったことにして、無言で駅に向かおうとすると、西脇さんに背後から手を取られ、捕まえられてしまった。
握ってきたその手が、あまりにも冷たくて。
『ここまで来てたんなら、店に来れば良かったのに。』と、思わず言ってしまったんだ。
その一言がまずかった。
西脇さんは、会いに来てくれたことを、俺が喜んだと思ったらしく、有無を言わさずに、握ったままの手を引っ張って、ずるずると車に乗せられてしまった。
『店に顔を出すのはちょっとね。取引先の営業がバイトくんと個人的なお付き合いするのって、何かとね。』
そんな事を、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて、言っていた。
―― 結局…… 自分が大事っていうわけだ。
『へえ、千聖って、一人暮らしなんだ。』
話の弾みで、言ってしまった俺が、馬鹿だったんだけど。
『じゃあ、駅じゃなくて、千聖のアパートまで送るよ。』
続きます。。
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