2015年12月2日水曜日

R18BL短編『うそつき』(18)


はじめて読む方は、こちらから。




(18)


 フーッと吐き出した紫煙が、テレビ画面から放たれる光の中を漂っていた。


「部屋の中で吸わないでください。匂いが移ってしまう。」


「ごめん。」


 素直に謝って、すぐに灰皿に煙草を押し付けると、立ち上がってベッドへ近付いてくる。


「でも、そう言いながらもちゃんと灰皿を用意しておいてくれるんだから、千聖は優しいよな。」


 そう言って、屈むと俺の額に、リップ音を立ててキスを落とした。

 西脇さんは、俺がうとうとしていた間に、もう服をちゃんと着込んでいる。

 さっき座っていた、クッションソファーの横には、ハンガーに掛けてあったはずのコートが置かれていた。


「…… 帰るんですか。」


 質問に「うん。」と頷いて、「また来週くるよ。」と、当たり前のように言う。

 たまには泊まってくれれば良いのに…、なんて、決して口には出したくない言葉が胸を過る。


「そんな拗ねたような顔するなよ。帰り難くなるだろう?」


 そう言って、ベッドの縁に座って、肌に掛けていた毛布ごと俺の身体を抱き寄せた。


「な、何がですか?なんで俺が拗ねるんですか。」


 心の内で考えたことを、顔に出したりなんて、絶対してない自信はあるのに、決まってそう言われる。

 きっと、こういうシチュにも慣れているからなんだと、思った。


「そうだ、千聖って誕生日いつ?」


 不意に訊かれた質問に、俺は一瞬答えることを躊躇した。

 だって、絶対笑われる。


「…… 二月十四日ですけど……。」


「マジで?」


 ほらね。西脇さんは、目を丸くして、口元に手を当てて、笑うのを我慢しているように見えた。


「笑いたければ、笑ってくれて良いですよ。」


 バレンタインデーが誕生日なんて、ネタにされるだけだって、今までの経験から諦めてる。

 だけど西脇さんは、驚いた表情はしたけれど、笑ったりしなかった。


「なんで笑うの。凄いじゃん、絶対忘れたりしないよ。」


 そう言いながら、西脇さんはローチェストに置いてあるカレンダーに手を伸ばした。


「二月十四日って、土曜日か……。」


―― ああ、土曜日になんて、逢えるわけないよね。






続きます。。



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