2015年12月3日木曜日

R18BL短編『うそつき』(19)


はじめて読む方は、こちらから。




(19)


 別に、そんなこと期待していた訳じゃない。

 毎年、自分の誕生日なんて、自分でも忘れてる。憶えてくれているのは、親くらいなもんだ。


「いいじゃん、じゃあ、土、日で、泊まりがけで何処か行こうか。」


「―― は?」


 何いってんだ、この人。バレンタインデーに泊まりで何処か行くなんて、出来るわけないじゃないか。



「そうだな、温泉とか行かない?部屋に露天風呂があるところとか!」


「―― はぁ、そうですね。」


 適当に相槌を打つ俺の額に、西脇さんはまたキスをひとつ落とした。



       *



 別に期待なんてしていなかった。
 
 いつも逢う時は、俺の都合なんてお構いなしで、平日の夜にだけやってきて、泊まることも一度もなかった。

 必ず奥さんの待つ家に帰っていく。

 一度、嫌味のつもりで訊いたことがある。

『どんなに遅くなっても家に帰るなんて、西脇さんは奥さんのこと、よっぽど大切にしているんですね。』


『違うって、ただ、アイツ怒ると怖いからな。』


 ―― うそつき。


 そんな訳ないだろ? そりゃ、俺の前で、一番大切なのは奥さんだなんて、言えないだろうけど。

 だから、温泉なんて行けるわけがないんだ…と、俺は自分に言い聞かせた。

 だって、期待すればするほど、ダメだった時のがっかり感は半端ない。

 今までだって、たまに「今夜行く。」なんて勝手にメールしてくるから、俺は、バイトが終わったら速攻で上がって、帰りにスーパーに寄る。

 西脇さんが来るまでにと、急いで食事の支度をして待っていても、連絡もなしに、すっぽかされる事なんて、しょっちゅうだった。

 最初は、ここに来るまでに、車で事故ったんじゃないかとか、連絡取れるまで心配で眠ることもできなかった事もあったけど。

 今は、「またか……」と思うようにして、さっさと寝てしまう。





続きます。。



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