2015年12月11日金曜日

R18BL短編『うそつき』(26)

はじめて読む方は、こちらから。




(26)



「あ、そう言えば、去年の催事の時にこの店に応援に来てた、西脇ってやつ、憶えてる?」


 忘れようと努力していた名前が、突然出て、心臓がドキリと跳ねた。


「…… はい。一緒に休憩に行きました。」


 俺がそう答えると、高岡さんは大きな目を更に大きくして、「そうそう!」と言って、話を続ける。


「あいつさ、去年の移動で、北陸に行ってたんだけど、戻ってくることになってさ。」


 ―― 北陸?


「へ、へえ。そうなんですか。」

 
 その時、お腹の大きかった奥さんの姿が頭を過ぎった。北陸へは、一緒に行ってたんだろうな。


「奥さん、赤ちゃん生まれたんですよね。」


 会話を繋げる為もあって、何気なくそう訊いただけなのに、高岡さんは、驚いたように目を丸くする。


「赤ちゃん?いいや? あいつ…… 子供はいないよ。なんで赤ちゃんが生まれたと思ったの?」


 ―― え?


「…… え…… なんか…… そんな事を訊いたような気がして……。」


 違う人と勘違いしてたかなーって、慌てて誤魔化した。


「そうだよね! 勘違いだろうね。」


 そう言った、高岡さんの表情に少し違和感を感じて、俺はつい訊いてしまっていた。


「北陸へは、単身赴任じゃないですよね? 奥さんも一緒に行ったんですか?」


「え…… いや……、」と、高岡さんは、困った顔をして言い淀む。


 どうしたんだろうと、思いながらも、もうそれ以上その話を続けたくなくて、俺は話題を変えた。

 赤ちゃんが生まれたという話は無いというのは、本当みたいで、妊娠の話も訊いてないみたいだった。

 あんなに目立つお腹をしていたし、高岡さんとは仲が良さそうだったのに。もしかして、また流産とかじゃないよねって、少し気にはなったけど。

 俺にはもう関係のないことだし、そのことについて、俺が気にするのもいけないことのような気がしていた。


       *




続きます。。



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