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tonberi & zu-cha 140SSリレー
『サクランボとクリスマス』
青い字が、tonberi
赤い字が、ずーちゃ です。
続きからどうぞ…↓
「伊織!」
初めて来た場所に辺りを見回していた伊織は、後方から聞こえた声に振り向いた。
「あっ、李央。」
手招きする李央の元へ伊織は駆け寄った。
「ちゃんと来れたね。」
いい子だと言うように髪を撫で、伊織の頬にキスをする。
「さあ行こう。」
伊織の肩を抱いた李央は、店のドアを押し開けた。
透き通るような鐘の音が鳴り、中に入ると伊織は小さく声を洩らした。
「わ ……。」
黒を基調とした店内は落ち着いた雰囲気が漂っている。
初めて大人の領域に足を踏み入れたような感覚に、伊織は少し緊張した面持ちで李央を見上げた。
そんな伊織を見て李央はフッと笑みを零した。
「あそこにいる仏頂面したのが臣だよ。」
伊織の身長に合わせるように屈んだ李央が、カウンターの方を指差す。
遠目でもわかる、こちらを睨みつけている目に伊織は緊張した。
「臣、そう怖い顔するなよ。さっき開けたばっかなのに凄いね。」
今度は伊織の腰を抱き李央は、カウンターまで歩み寄る。
「まあな ……。」と、言いながらも鋭い視線は伊織を捕えたままだった。
「ねえ、李央。」
その視線から逃れるように目を逸らし、伊織はカウンターの下で李央の服の袖口をつまんで俯き加減で小声で話しかける。
「臣はどうして怒ってるの?」
「さあ、なんでだろうね。」と、李央は楽しそうに笑う。
袖を摘まむ伊織の手を取り、李央はカウンターに持ち上げ肘を突き、指を絡め手を繋ぐと、伊織の手の甲に唇を押し付けた。
「伊織の事が気になるんじゃない?」
何度か肌を啄み、李央は臣へ妖しい視線を送る。
「でもこれは俺のモノ。ね、伊織 ……。」
パッと表情を明るくした李央が、伊織に笑いかけた。
「李央 ……。」
伊織は肌を熱くさせた。
李央の言動は、余計に臣を煽る。それどころか何故か周囲の視線まで纏わりつくように集まってくる。
「は?俺がこんなガキを気にするわけないだろ?」
そう言って、臣は伊織の前にオレンジの液体が入ったグラスを置いた。
「お子様はジュースでいいよな?」
あからさまな態度に、李央は堪えきれず声を出して笑った。
「ククッ…、伊織今日はこれで我慢ね。」
オレンジジュースと共に置かれたアルコールの入ったグラスを、李央が手に取る。
「乾杯しよう。」
「あっ、うん。」
慣れない仕草に、慌てて伊織はグラスを掴んだ。
「メリークリスマス」
オレンジジュースを飲みながら、伊織は気付かれないようにカウンターの中の長身の男を盗み見る。
しなやかな動作でシェーカーを振りながら、客と談笑している臣は、伊織から見てもカッコいい大人の男だ。
「何じろじろ見てるんだ。」
気付いた臣に不意に言われて、伊織はびくっと肩を震わせた。
「なに伊織、臣がそんなに気になる?」
肘を突きながら呑んでいたグラスを置いた李央は、そのまま頬杖を突き伊織を流し見る。
「えっ、あ…違っ、」
口ごもる伊織の横顔から視線を外し、李央は臣と向き合う。
「臣、抱いてあげたら?」
自分を俺のモノだと言った筈の李央の発言に、伊織は焦る。
続きます…
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