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第一章:聖夜と生クリーム味の……(3)
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俺のバイトするカフェレストランは、待ち合わせに使う客も多いせいで、金曜のこの時間帯は、店内はかなり賑わっていて忙しい。
だけど、金曜日にバイトに入るのを、俺は密かに楽しみにしてる。
その理由は……。
「あ…… きた……」
ほぼ毎週、夕暮れ時にこのカフェに姿を見せるカップル。
入り口の扉を開けるところから、彼女をスマートにエスコートするように入ってくる長身の男性の動作ひとつひとつがかっこいい。
賑わう店内でも、ひときわ目立つ美男美女。
男性は20代半ばくらい。女性は20代前半かな。
暫くその二人を目線で追い、ボーっと見惚れてしまう。
「呆けてないで注文聞いてこいっ!」
フロアマネージャーに突っつかれて我に返るのは、いつものこと。
「あ…… すみません」
俺は、慌てて美男美女のテーブルへ注文を聞きに行く。
「ホットコーヒーと……、あとケーキセットを……」
女性の方が、美しく微笑みながら いつもと同じ注文をする。
「少々お待ちくださいませ」
マニュアル通りの、それだけの会話でも、俺は毎回緊張してしまう。
一旦立ち去り、何種類かのケーキをトレイに乗せて戻る間も、心臓がドキドキしてる。
「お好きなのをお選び下さい」
トレイを差し出すと、女性は う~ん…と首を傾げて、一瞬考え込む仕草をする。
だけどすぐに「じゃ、これを……」と柔らかそうな女らしい指でケーキを指した。
その間、男性の方は優しそうな笑みを浮かべながら、黙ってただ女性を見守るように見つめている。
ただそれだけの事なのに、店内の喧騒の中、この二人の周りだけ、優雅で大人な空気が流れている。
(ほんっとに綺麗だなぁ……)
溜息を吐きながら心の中で呟く。
―― だけど……、
俺が気になっているのは、実は女性にではなく、男性の方。
身長は180cmくらいかな。
黒くて癖のないサラサラの髪。
黒目がちな瞳は潤んでるように見えて色っぽい。
コーヒーを飲む時に少し伏せる長い睫。
カップを持つ細くて長い指。
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