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第一章:聖夜と生クリーム味の……(12)
あっと言う間に、カルボナーラとサラダが出来上がって、食卓に向かい合わせに座る。
「あ、そうだ。ワインでも開けようか」
透さんがそう言って立ち上がりかけた。
「あ……」
―― 未成年なんです…… って言いかけてやめた。だって、家でも合コンとかでも、既に飲んでたりしてるし……。
「ん?お酒飲めなかった?」
だけど透さんに、そう訊かれてしまうと、素直に白状してしまう。
「あ、いえ、まだ18歳だからと一瞬思ったんだけど…… でも家でも飲んだりしてるんで、大丈夫です」
結構強い方だと思うし、うん…… ワインも大好きだし……。
「へぇ、そうなんだ。大学生だよね?何月生まれなの?」
「3月31日なんですよ」
生まれるのが、あと2日遅かったら、まだ高校生だったんだ。
「そうかー、じゃぁ、未成年だからお酒はお預けだな。残念だね……」
透さんはそう言って、悪戯っぽく笑う。
「ええええっ!いや!大丈夫ですからぁ、ワイン開けようかって話が出たら、飲みたくなっちゃうよ」
そう言いながら、慌てる俺を見て、透さんが爆笑してる……。
「あはは。 直くんは可愛いな。じゃあ、少しだけ…… ね?」
と、笑いながらグラスにワインを注いでくれた。
「透さん、笑いすぎ……」
目に涙浮かべて笑ってるんだもん。絶対に、子供扱いしてるよなー。
「ごめんごめん、じゃ乾杯しよう」
お互いのグラスを傾けて、
「乾杯!」
今日初めて会話した透さんと、こうして二人でクリスマスイブを過ごすのって、なんか不思議な気分だ。
料理は凄く美味しくて、ワインも美味しくて、俺は、あんまり飲んじゃだめだよって言われたのに、一気に飲み干してしまったりして。
…… ちょっとだけ、いい気分でポワンとしてる。
透さんは聞き上手で、食事してる間も俺のくだらない話を、「うん、うん」と頷きながら、訊いてくれた。
暖かい笑顔、柔らかい物腰。
今日初めて知り合ったと言うのに、昔からの友達のような、兄貴のような…… 最初の緊張はすっかり解れて、居心地が良くて、時間の経つのを忘れて話し込んだ。
食事の後、映画でも観ながらケーキを食べようって事になって、場所を食卓からリビングのソファーに移動した。
俺はソファーに座っていて、透さんは、ソファーとローテーブルの間に座って、小さめのホールケーキを切り分ける。
「一人二切れ食べれるね」
そう言いながら、とりあえず一切れ取ってソファーに座ってる俺に渡してくれる。
上に苺がぎっしり乗ってて、苺の隙間にブルーベリーが見えていて、生クリームがふわふわしてて美味しそう。
俺のバイトしてるカフェのケーキは、自分でも時々買って帰るくらい、味はめちゃくちゃ美味しい。二切れくらい、ぺろっと食べれそうだ。
「いただきまーす」
生クリームは口の中で、自然に溶けるような感じで柔らかくて……。
―― やっぱり美味い!
ケーキに夢中になっていると、気が付いたら床に座って食べていた透さんが、後ろを振り向いて、俺の顔をじっと見つめて、ニコニコしてる。
「…… え?」
そして、急に透さんの長い指が、俺の顔に近づいてきて……
…… 口元に触れた。
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