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2017年3月26日日曜日

『出逢えた幸せ』第二章:迷う心とタバコ味の……(4)

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第二章:迷う心とタバコ味の……(4)



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 ―― もう、透さんと二人きりで会うことは、二度とないんだ……。


 大体、何であんなことになったのかな……。


「生クリーム……」


 手に持った、プリンアラモードを、まじまじと見つめてみる。


「あ?生クリームが、どうしたって?」


 コンビニでもらったスプーンの袋を開けながら、啓太が怪訝そうな顔をする。

 俺は、プリンを囲むように飾られている、生クリームを指で掬って、自分の口の周りや、鼻のてっぺんに、塗りつけてみた。


「なっ?何やってんの、お前 ?!」

「なぁ、啓太」

「なんだよっ」

「お前さ、俺の顔に付いてる生クリーム、舐め取れる?」


 俺がそう言うと、啓太は驚いて目を見開いてる。


「なぁ、どぉ?」


 俺が目を閉じて、顔を啓太に近づけると、啓太は慌てて後退りする。


「…… ちょっ……、それ、何のプレイなわけ?」


 うん、かなりの羞恥プレイだと思う。


「できない、よな?」


「あ…… 当たり前だっ」


 ―― そうだよなぁ……、普通はしないよな。


 そう思いながら、テイッシュで顔の生クリームを拭き取った。


 ―― なんか、ベタベタする……。


「お前なー、食べ物粗末にすると、罰当たんぞ」


 啓太が、呆れ顔で言う。


「んーーーー」


 でも、昨夜の透さんは、生クリームで何かのスイッチが、入ったような気がするんだよな。


「お前、何かあったの?」

「いや、別に……」


 言えないじゃん、昨夜男と寝たとか……。
 そう思うと、昨夜の情事が頭を過ぎって、顔が熱くなった。


「あのさー、お前、ゆり先輩と何かあったろ?」


 啓太は、プリンアラモードを食べながら、ちろりと横目で俺を見る。


「ゆり先輩?」


 誰の事か、ピンとこないけど、話が変わったことに、俺はちょっとホッとした。


「いつだったか、学食で声かけられて、二人でどっか行ったじゃん」


「あ……、サークルの先輩?」


 そうそうと、啓太が頷く。


 ―― 空き教室で、一回だけヤッたよな。 結構可愛かった。


「昨夜も、ゆり先輩と?」

「はっ?んなわけ、無いじゃんっ」


 ゆり先輩とは、あれきりだ。今の今まで忘れていたし。


「ホントに?」


 何やら、真剣な眼差しで訊いてくる啓太を、不思議に思いながら、


「ホントだよ、なんで? ゆり先輩とは、あれきり会ってないけど?」


 そう答えると、啓太は、少し安心したように、「なら、いいけど……」と、ボソッと言って、またプリンを食べ始めた。
 なんとなく、啓太の態度に違和感がある。


「なんだよ? ゆり先輩がどうかした?」


 俺がそう訊くと、啓太は少し気まずそうな顔をする。


「ゆり先輩さ、モテるから、その……、お前と付き合ってるみたいな噂が流れててさ。 ゆり先輩のことを好きな連中に、目ぇ、付けられてたらヤバイと思ってさ」


「はぁ?」


 なんで、そんな事になるんだ?ゆり先輩は、後腐れなさそうに思ったし、付き合ってるなんて噂が流れるなんて、思ってもいなかったんだけど……。


「会ってないんなら、いいけどさ、ちょっと心配だったからさ、つかさ、あんまし遊び過ぎんなよ、恨み買ったら、馬鹿みたいじゃん」


「そうだな、気をつけるよ」


 確かにな…… と、思った。
 今まで俺は、いいかげんに考え過ぎていたかもしれない。
 その場限りに関係を持って、俺はそれでよかったけど、相手がどう思ってるなんて、考えた事なかった。


 ―― 透さんは、俺のこと、どう思ってるんだろう……。


 やっぱり、ただの気まぐれだったのかな。俺も、それに流されたんだから、自分も気まぐれなんだと思うけど……。

 何か、割り切れない気持ちが、胸の中でモヤモヤしてて、分からないんだ。

 俺、バージンだったし…… なんてね……。
 女の子のバージンも、何度か頂いちゃったよな……。
 もっと考えてあげないといけなかった……、なんて、いつもなら、そんなこと、思ったりしないのにな……。







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