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第三章:身体と愛と涙味の……(33)
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そうしてゆっくりと指を動かし続けながら、みっきーは俺が話すのを待っている。
やだな……そんな風に優しくされたら、また泣いてしまいそうなんだけど。
最後に見た透さんの、憂いを含んだ瞳が頭から離れない。
——直くん、最後に誤解だけは解きたいから言わせてね。
俺の好きな柔らかい声で……、『最後に』って、言っていた。
「透さんの彼女と思っていた人、妹だったんだ」
「え? そうなんだ。じゃあ、障害ないじゃん。晴れて恋人になったにしては、何でそんな酷い顔してるの」
恋人になんてなれない……。だって俺、透さんに酷いこと言っちゃった。
「……もう会わないって伝えたよ」
「え?」
「いいんだ、もう終わったから」
「いいって……、透さんは何て言ってるの?」
「……わかったって……」
「直は、それで良いの?」
「……うん、すっきりしたし……。もうこれで、透さんの事で悩んだり、考えたりしないでいいんだし……」
俺の後頭部に、みっきーの大きな掌が包むように触れてきて、そのまま胸に引き寄せられた。
「……馬鹿だね、直は」
ホント、俺って馬鹿。
引き寄せられるまま顔を埋めたみっきーの胸は暖かくて、俺は目を閉じる。
——他に好きな人がいるのに、俺を抱いたくせに……。
言わなくていい事、言っちゃって。
胸の奥が、ズキズキしてて。
俺は別に、透さんと付き合ってたわけでもなかったのに……。
哀しくないのに、哀しくて……。
「……っ……う、――ッ」
なのに、何でまた涙が出るかな。
「……だからもう、俺にしとけば?」
笑いながらそう言って、みっきーがポロポロ零れる涙を指で拭ってくれる。
なんでも冗談っぽくしちゃうのは性格なんだろうけど、本気で言ってくれてるんだってことは、俺にもちゃんと分かってる。
でも……。
「……やだよ」
わざと、ふてくされ気味に断ったのに、みっきーは可笑しそうにクスクス笑う。
「何で、嫌なの。こんなに優しいのに」
「みっきーの事好きだけど……、やっぱりその好きの種類は違うと思うし……」
「あれ? 俺の事は違うって判るんだね。透さんの好きは、どの好きか分かんないくせに」
「みっきーの事も、分かんないよ」
「なんだぁ? じゃあ、まだ俺にもチャンスはあるって事?」
「俺、好きの種類がどれなのか分からないのに、簡単にエッチしたりするのはもうやめるって事」
それは、透さんに言われて分かった事。
本当は、前から薄々気が付いていたのに……。
ずっと、知らないふりをしていた。
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