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2015年11月30日月曜日

R18BL短編『うそつき』(16)


はじめて読む方は、こちらから。




(16)



 一人暮らしのアパートまで来て、この人がおとなしく帰るわけないなんて、中学生にだって分かりそうなものなのに。

 一度部屋に上げてしまったら…、もうその後は、なし崩しだった。

 それからは、週に一度、平日の夜にやって来るようになった。

 事前に連絡なんてなくて、いつも突然で。

 俺が遅番でバイトを上がって帰ってくると、部屋の前で大きな身体を丸めるように座り込んで待っている日もあった。

 今夜も、勝手に鍋の材料を買ってきて、「おかえり。」と、部屋の前で、ネギを覗かせたスーパーの袋を持って立っていた。

 いつだって自分勝手で、強引で…


「…… あ……ッ、んぅ、……。」


 男二人で使うには到底狭過ぎる、シングルのパイプベッドの激しく軋む音が、安普請のアパートの部屋に響く。

 絶対隣に聞こえてる。

 だから、せめて声だけでも我慢しようと努力している俺のことなんて、何も考えないんだこの人は。


「もっと可愛い声聞かせてよ。」


 そう言って、唇に押し当てていた手を、シーツに縫い止められて、律動が激しくなっていく。

  突き上げられるように、いいトコロを攻められて、蕩けきった俺の中は、悦んで西脇さんを締め付けて。


「ーあっ、……ああぁ!」


 今まで知らなかった快楽を、また新しく教え込まれて、俺は歓喜の声を上げてしまう。


 悔しいけど……、こんなの嫌だけど……、俺は……

 西脇さんに逢うたびに、この快楽を貰えることを、心のどこかで期待してしまっていたのも事実だった。

 西脇さんも、俺も、ここに愛なんて、無いと分かっていた。


「愛してるよ、千聖。」


 一緒に昇りつめて、余韻に浸る身体を寄せ合って荒い息を吐きながら、西脇さんは、必ずその言葉を囁く。


 ―― 嘘つき。


 俺は、そのたびに心の中で、そう呟いていた。


「千聖は?」



 そして必ず、俺にもその言葉を言わせようとする。

 だけど俺は、毎回別の言葉で誤魔化した。







続きます。。



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