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2015年12月10日木曜日
R18BL短編『うそつき』(25)
はじめて読む方は、こちらから。
(25)
*
『今度来る時は、泊まるよ。』
そんなことも言ったことがあったけど、ただの一度だって、俺の部屋に泊まったこともない。
いつだって、自分の都合の良い時だけやってきて、食事の支度をして待っていた夜だって、
『晩飯、今日はいいや、腹減ってないし。』と、言って食べずに、でも、セックスはするんだ。そして、必ず奥さんの待つ家に帰って行った。
『じゃあ、土、日で、泊まりがけで何処か行こうか。』
『そうだな、温泉とか行かない?部屋に露天風呂があるところとか!』
無理な約束ばかりいっぱいして、結局、貴方は一度も約束を守ってくれることはなかったね。
『愛してるよ、千聖。』
『お前といると、嫌なことなんて全部忘れる。』
『千聖は俺の癒やしだな。』
『お前は、俺のやり甲斐だ。』
貴方の口から出る言葉は、全部うそだった。分かっていたのに、なんでこんなに胸が苦しいんだろう。
貴方のことなんて、好きじゃなかったのに。恋人でも、愛人でもない、ただの…暇潰しだって、分かっていたのに。
なんで、こんなに…… 涙が止まらないんだ。
*
俺はバイトだから、もうあの人に会うこともない。
一緒に過ごした夜は、数えることが出来るくらい少ないのに、なかなか忘れることができなくて。
あれから一年が過ぎたのに、まだ心の奥に西脇さんの存在が確かにあって、それでも忘れたふりをして、一生懸命に前を向いていた。
そんなある日、西脇さんと同じ会社で、うちの店の営業担当だった高岡さんが、久しぶりに巡回に来た。
去年の秋に自社ブランドのショップの担当になってから、俺のバイト先の店は他の人が担当するようになっていた。
「久しぶりだね、千聖くん。」
「本当ですね、高岡さん担当が変わったから、今年の周年祭の時もいなかったですしね。」
自分でそう言って、去年のあの催事初日の光景が頭を過ぎってしまう。
続きます。。
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